コラム

見出し 命のダシ
更新時間 2005/06/27 名前 よねやん
本文  料理の鉄人・道場六三郎の「命のダシ」をご存じだろうか?氏の出演する料理番組を観ていると、ほとんどの場合に出てくる必須のアイテムである。簡単に言ってしまうとカツオ風味のダシ汁なのだが、これが出ないと番組構成上収まりがつかないのである。ほとんどの人がこのダシを味わったことがないのだが、なぜか謎めいていて「たぶん、スゴクうまいに違いない」と誰でも思ってしまう。  味の内容はさておき、今回は「プロはお決まりの必勝パターンを持っている」という話をしたい。

 「命のダシ」は道場氏が仕事のミッションを遂行する上で一つの基準であり、必須のアイテムである。このダシを基準に料理を組み立て、状況に応じて味の微調整を行うのである。濃いめの味付けが要求されるときは、醤油などを足し、かくし味で使うときはこのダシを少しだけ入れる。これを使えば間違いがないし、絶対の自信があるので「マンネリ」と言われようが、常に90点以上を求められるプロにとっては、外すことができないのである。

 この「命のダシ」に匹敵するものが報道カメラマンの世界にもある。業界の中では

「200ズーム(にひゃくずーむ)」

と呼ばれているものである。「200mmのズームレンズ?」普通は変に思うであろう。答えは「80-200mmF2.8」のズームレンズのことである。「はちじゅう、にひゃく」と言うのが面倒なので200ズームと呼ぶようになったと思われる。最近は性能が向上し70-210mmF2.8などもあるが概して200ズームと呼ぶ。

 月例会の作品で被写体が小さいものを目にするので、筆者はとにかく長めの望遠レンズで大きくとることを勧めている。よって暗い望遠レンズでもその場で持っている意味は大きい。また最近の電子カメラは性能が上がり高感度撮影が可能なので、明るさがF5.6くらいの暗いレンズでも問題のない場合が多い。さらに絞って使う場合は、暗いレンズでも明るいレンズでも結果に大きな違いは出ない。だから「高価で重いF2.8のレンズをわざわざ買わなくても」と考える人は多いだろう。

 それでもプロがF2.8の明るさのレンズにこだわるのは理由がある。

 明るいレンズは絞りを開けてバックをぼかして撮ったり、テレコンバータを付けて焦点距離を延ばして超望遠で撮ったり、いわゆる「味の微調整」が行いやすいのである。暗くて安いレンズではこれができない。結果として重くて高くても作品のバリエーションを考えると使わざるを得ないのである。逆にこれがないと勝ちパターンが組めず、道場六三郎風に言えば「命のレンズ」というところだろう。海外出張でファッションショーなどを撮る場合は特に重要なので、この「命のレンズ」を2本持参することもある。

さらにカメラ好きの人に、プロっぽいネタをお教えしよう。

 この200ズームにはズームとピントを一つのリングで行なうタイプと、二つのリングで行うタイプがある。前者を「一軸(いちじく)の200ズーム」、後者を「二軸(にじく)の200ズーム」と呼ぶのである。手でピントを合わせる場合は一軸が断然使いやすいのだが、オートフォーカスが標準となった現在は、作り易さからメーカーの勝手な都合でほとんどが二軸になってしまった。よって一軸のタイプが欲しい場合は中古で買うしかない。もし中古カメラ店で

「この一軸の200ズーム見せてください」

という汚い格好をした人を見かけたら、それはきっと報道カメラマンである。


200ズームで絞りを開けバックをぼかして撮る(長崎撮影旅行で)


200ズームに2倍のテレコンを装着すると400ミリF5.6のレンズになる
超望遠の圧縮効果で電柱や坂の街がおもしろい(長崎撮影旅行で)