コラム

見出し カメラマンの壁紙
更新時間 2005/08/17 名前 よねやん
本文 <カメラマンの壁紙>

 筆者は大学時代に中華料理店でアルバイトをしていたことがある。 客の残した料理は食欲旺盛な大学生にはありがたく、 唐揚げやら八宝菜やらバイトが終わると無心に食べていたのを覚えている。 ご飯を食べに通い、オマケでバイト代までもらえるという感覚であった。

 店が終わると従業員が集まりご飯を食べて解散という流れであった。 そこで料理人が特別に作った料理が登場した。 いわゆる「まかないメシ」というやつである。 食材の残り物でつくるのであるが、料理人もプライドがあるので 下手なものを出すはずもなく、絶品の料理がテーブルを飾るのである。 短時間でサラッと作るのであるが「“さすが!”とうならせなくては 料理人としてのプライドが許さない」この感覚が分かりいただけるであろうか。

 プロカメラマンのプライベート写真も同様のことがいえる。 家族の写真、結婚式、年賀状などちょっとしたものでも下手な写真は プライドが許さないので本能的にガンバってしまうのである。 それも時間をかけていては仕事と変わらないので、 「いかにサクッと撮ってスゴイ作品に仕上がるか?」これがポイントである。 現に筆者のところに届く年賀状は秀作が多く、年明け早々にニヤッと させられることが多い。誰も考えつかない街のスケッチ写真、 戦場で大砲の上で本人がポーズする意味不明の作品など、見ていて飽きることはない。

 そこでひとつ思い出したこと・・・

 今年の1月の月例審査で気になる作品があった。入選常連者の作品で猫を題材にしたものだ。


お母さんが通る

ショーウインドウの猫の模型と実際の猫が一緒に写っていて、 おもしろい作品なのだが今ひとつ印象が薄く物足りない気がした。 審査員も同じような意見だったようで結果は奨励賞、順当なところであろう。

 最近はペットブームでいろいろなパターンの作品を目にする。 見たことのない構図の作品は少なく、むしろ見飽きた感もある。 それを考えるとこの作品は変わっていておもしろいのであるが、何かが足りない。

 それ以上は深く考えなかったが、先日に同僚の撮った猫の写真を見て気がついた。
その作品は休みの日にプライベートで撮ったもので、別に何に発表するわけでもなく パソコンの壁紙として鑑賞して楽しんでいるだけのものである。 壁紙では自分の好きな作品を表示させれば良いだけであるが、 同時に他人の目にも入るのでヘタな作品はプライドが許さないものである。 いわゆる「プロカメラマンのまかないメシ」といったところであろう。


猫の視線

 前者と後者はインパクトの面で歴然と違いがある。 後者は「猫の視線」で作品を仕上げているのである。自分が猫になったとすると、 おそらく後者の写真のような風景が飛び込んでくるに違いない。 正面の猫は自分に何かを語りかけているようにも思える。ゆっくりとした時の 流れの中でこの作品の5秒後、10秒後の猫の世界が想像できるようだ。

 前者の作品では「あっ、猫の模型と猫」だけで終わっていて、 もう少し踏み込みが足りなかったのである。もし前者の作品を 「猫の視線」で撮影したらどうだったか?明らかに猫の世界の作品が作れたはずである。 実に惜しい。あと50cmしゃがんで撮れば、、、
小さな差が大きな違いを生む。写真の難しいところであり、面白いところでもある。