コラム

見出し 効率よく微調整
更新時間 2005/11/21 名前 よねやん
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<効率よく微調整>

◇横浜・JR桜木町駅を降りるとひときわ目立つ建物がある。「帝蚕倉庫」と書かれた古めかしい倉庫のカベは、時代を感じさせるツタで覆われカメラマンなら誰でも作品にしたくなる有名な撮影ポイントである。

◇2004年10月、この桜木町で東京YPC秋の撮影会があり、筆者はその下見を行うことにした。「赤れんが倉庫」「横浜ランドマークタワー」などを撮り終えた後、やはりお決まりの「帝蚕倉庫」がとどめを刺す。

◇秋が感じられないほどカベのツタはみごとな緑を奏で、創作意欲を奮い立たせるには十分すぎるものであった。しかし実際の画像をデジカメの液晶で確認すると何か物足りない。時間はすでに15時にさしかかり、光線の加減から残された時間は長くない。とりあえずいろいろな角度から約200カットをメモリーカードに収め桜木町を後にした。

◇次の日に、めぼしい3コマを2Lサイズにプリントしてみる。悪くはないがメチャクチャ良いという作品ではない。その時の写真は次の通りである。


下見で撮影した帝蚕倉庫2004年10月1日撮影

 「何かかが足りない!」

「飛行機を画面の角に入れるか」いやいや「風船を持った外人の子供を入れるか」などとイメージを膨らませながらも良い案が浮かばない。この写真を職場のエースカメラマンに見せたところ即答が返ってきた。

「紅葉の時に出直したら?」

「あっ」そうなのである。写真というものは?座標軸(撮影場所)?時間軸(撮影時間)を微調整しながら最適の条件になるように作品を組み立てて行く。撮影場所を気にしすぎて時間軸の概念がすっかり抜け落ちてしまったのである。よーく見て欲しい。画面左下に針葉樹がカベにめり込みながら力強く茂っている。おそらく紅葉したツタの中に針葉樹が浮かび上がるという計算である。

◇11月30日、撮り直しの日が訪れた。晴天で紅葉も真っ盛り、チャンスだ。到着すると予想していた通り真っ赤なツタの紅葉と針葉樹がまるでおとぎ話に出てくる絵のように鮮やかさを映し出している。すでにプロカメラマンが撮影を行っている。「条件は整った」そう思い自分もデジカメで撮っては液晶で確かめる作業を繰り返した。

◇ここは手前が駐車場なので車を入れたり、人を入れたりするも作品がまとまらない。隣で撮影をしているプロカメラマンも同じ思いなのだろう。いろいろなバリエーションを撮っているがどうも表情がさえない。やがてそのカメラマンがあきらめて帰ったあと、一つのアイデアが思い浮かんだ。

「カモメの餌付け(えづけ)作戦」

◇さっそくコンビニで食パンをたくさん買い込み、カモメを誘い出す。カモメが食パンに気付くまでに30分ほどかかったが、やがて1羽が見つけると群がるようにカモメが集まってきた。もう後はデジカメの独壇場、誘い出しては連写でカベとカモメを引っかけて大量のコマを切る。このような場合は予測して撮れないので、たくさん撮ることをお勧めする。15分の間に200枚ほど撮りミッション終了。その時の作品がこれになる。


まず食パンでカモメをおびき寄せる


完成作品、題は「港の創る風景」とした。
NIKON D70 + 12-24mm 2004年11月30日撮影


◇最初の下見から紆余曲折があったが、微調整を重ねて作品へ仕上げる過程がお分かりいただけたと思う。最初は紅葉の時期に撮り直すという「時間軸の微調整」を行い、最後は撮影ポイントだけでは解決しないので餌付け作戦で被写体の「座標軸を微調整」を行った。同じ場所で撮っても作品が全く違ってくる。それほど「微調整」は大きな要素を占めるのである。