コラム

見出し 進級試験
更新時間 2005/12/29 名前 よねやん
本文 <進級試験>

ベッサーL本体     =1万円 ニコノス?(35mm付)=2万5千円 リコーGR10     =2万8千円 ニコンF801     =8千円


◇この値段を見て安いと思う読者はカメラ通であろう。これらは老舗中古カメラ店での年末大バーゲンの目玉商品である。毎年、年の瀬のセール開始日はそれらを目当てに朝の開店前から大勢が店頭にならび手に入れるというのがお決まりのパターンだ。今年も20点ほどの目玉商品が準備され、12月下旬の週末からバーゲンが始まった。チラシに欲しいカメラが数点あったが、筆者はその日不幸にも仕事があり悔しい思いをしていた。

◇バーゲン開始から4日後、仕事帰りにその中古カメラ店に立ち寄ることにした。以前からその店で委託販売をお願いしていたニコンF3の代金を受け取りに行くためだ。(話はそれるがデジタルカメラを買う資金捻出のために銀塩カメラを売る人は多い。このニコンF3も職場の先輩のカメラで、筆者が代わりに委託販売したもの)

◇店に入ると一番目立つケースに「ドーン」と年末バーゲン品が並んでいる。安いと思っていたニコノス?(35mm付)もなぜか鎮座している。

「あれっ、バーゲンまだ始まっていないの?」

◇店員に聞いてみると、すでに始まっており実は売れ残っているという。それも2?3台ではない。バーゲン品の多くが売れ残っているのである。どれも程度が良くかなり安い。たとえば通常5万円で売られているものが3万円という具合である。しかも信頼できる店で6ヶ月の保証もついている。それなのに売れ残っている。

◇読者は売れ残りの理由が分かるであろうか?分かればかなりのカメラ通だ。でも恥じることは無い。老舗のベテラン店員すら見誤ったのだから。

◇理由は複雑でおそらくこのようなことだ。1999年秋にニコンが一眼レフデジカメを発売してからデジカメ市場は倍々ゲームを繰り返してきた。2005年の予想によると国内販売台数はデジカメ870万台に対して銀塩40万台しかない。もう20人に1人の変わり者しか銀塩を買わなくなったのだ。「そのようなこと誰でも知っている」と思うだろう。更にこの問題は根が深く話はつづく。

◇2000年ごろ、掉尾の一振りで銀塩カメラブームがあった。ニコンのS3が復刻版で発売された年だ。昔の旧いカメラを首からぶら下げる若者が街でよく見かけられ、銀塩は根強い人気を見せつけた。誰もがデジタルと銀塩の共存を確信した。しかし現実はきびしかった。急速にブームは去り、中古銀塩カメラの相場は半値ほどになってしまった。銀塩や金属製カメラブームは一過性だったのだ。

◇そのブームにあぐらをかいていたカメラ店は今きびしい現実に直面している。銀塩カメラを置いても売れない。そもそもデジカメ志向の若者はわざわざ店に行かずにインターネットのヤフーオークションや価格コムで買うのだ。これでは老舗の「店を構えて客を呼ぶ」というビジネスモデルが成り立たない。後に残ったのは銀塩カメラの大量在庫と銀塩しか分からない型落ちの店員だけなのだ。

◇反面、デジタル化がうまくいってホクホクの店もある。中野区の中古カメラ店などは在庫がホームページで確認できるのでネットによる注文が多い。年末のボーナスシーズンなどは売れすぎて在庫がとぼしくなりショーケースがスカスカになる。

◇今考えると2000年の銀塩カメラブームこそ、中古カメラ店に神様が与えた進級試験だったに違いない。無事、銀塩を修了してデジタルに進級できるか?神様は少しイジワルで5年経った今になって結果を発表したわけだ。


思わず安いので買ってしまったニコノス?