コラム

見出し 美人コンテスト
更新時間 2007/04/19 名前 よねやん
本文 ◇目の前で美人コンテストが開催されていて、優勝する女性を当てればスポンサーから 賞品がもらえるとしよう。読者はどのような女性を予想するであろうか? 最近は内面を重視する傾向があるので、高学歴で福祉活動をしていて、 スタイルが良くて、それでもってキレイな女性を予想すれば高い確率で 当てることができるであろう。

◇そこで優勝すると思われる女性と、一番キレイだと思う女性は読者の 中で必ずといって一致しない。答は簡単、前者は「皆が投票しそうな女性」 で後者は「自分がキレイだと思う女性」だから一致しないのだ。 これに似たちょっとした事件があったので今日はそれを紹介したいと思う。

◇先日、第32回木村伊兵衛写真賞の発表があり、本城直季という20代の 若手写真家が受賞した。本賞は写真界でもっとも権威のある賞で、 文壇でいうと直木賞に匹敵する。本城氏は「アオリ」技法により風景の一部だ けにピントを合わせて、作品をあたかもミニチュア模型のような感じで仕上げている。 4×5サイズの大判カメラでアオリ技法を使い、ピントの合っている部分はシャープで、 それ以外の部分はなだらかにボケさせる斬新さで今回の受賞となったようだ。 本人の作品をここで掲載したいところだが、著作権の問題で筆者が撮った本城風作品 を今日は紹介する。1点にしかピントが合っていないと人の目は錯覚して模型のよう に感じてしまうから不思議だ。


本城直季風作品(筆者撮影)

◇筆者が原稿を書いたのではないが、紙面で本城氏の受賞が紹介され、 作品が掲載された。それは受賞の紹介をするごく日常的な原稿であったが、 これを読んだあるアマチュアカメラマンから苦情をいただいたのだ。 内容はこうだ

「本城直季の作品のどこが良いのか分からない。受賞理由を説明して欲しい。」

というものである。

◇他社が主催する写真賞の苦情を筆者に言うのも失礼な話である。 また筆者が選考しているわけでもないので答える必要もない。 そもそも本城氏のアオリ技法というものは目新しいものではなく、 海外でも発表している写真家は存在した。しかし日本では見られない 斬新な作品だったので写真集が5万部も売れたとの話だ。 写真集というのは文章をたくさん書く必要もなく、 資金さえあれば簡単に制作できるのでウジャウジャと出版されている のであるが実際にはほとんど売れていない。せいぜい1000部も売れれ ば多い方で、5万部も売れたのは異例である。受賞後はさらに売れたで あろうから最終的に10万部は越えるだろう。

◇個人的に「たかがアオリ技法で受賞というのはいかがなものか?」 「アオリ技法の次の作品が重要で、本当に本城氏はプロとしてやって行けるのか?」 などとも思うが、写真集をたくさん売ったのだから多くの人が共感したということだ。 いろいろ反対意見もあるだろうが、受賞に匹敵する実績がある。

◇それにしても「本城直季の作品が分からない」で怒っているようでは 写真は永久にうまくならないと思う。要するに本賞は美人コンテストと同じなのだから、 票を投じる審査員が多ければ良い作品なのだ。そういう意味で写真集の販売部数で結果を出し、 多くの人に感銘を与えた本城氏の受賞は妥当なのだ。 それを理解しようともしないで文句を言っているようではダメなのだ。 それを受け入れて自分の作品に生かせないと進歩が無い。

◇写真というのは自分の良いと思う作品が必ずしも評価されるとは 言えない。逆に自分を抑えていると思わぬ評価を受けたりする。 本城氏の作品は確かに万人受けはしないが多数決で1等賞になる内容なのだ。 一つの方向性として常に周りの反応を気にして意見をフィードバックさせれば 評価される作品が生み出せる。「他人の意見はどうでもよい、 自分が良いと思うものを撮り続ける」も別の方向性なのだが、 こちらの方は偶然にスゴイ評価をもらうこともあるが、 コンテストの常連になることは難しい。あとはカメラマンの考え方の違いであろう。