コラム

見出し 2.5次元的感覚●
更新時間 2007/05/22 名前 よねやん
本文 ◇先日、プロスタジオでモデルを撮影する1日研修コースがあり、興味があったので受けてみることにした。これまでスタジオへはオマケで付いて行ってモデルの横でシャボン玉を吹いたり色つきのボールを投げたりしたことはあるが、自分が撮るのは初めての体験だ。受講料は東京YPCの年会費でいうと7年分と高かったが、一流のモデル、スタイリスト、メイクなど普通にコマーシャルフォトが撮れてしまうほどの内容なので仕方あるまい。もちろん自腹、撮った作品は著作権の問題で使うことはできないので純粋なる研修だ。これが安いか高いかは考え方次第だ。

◇受講者は12名、一流の先生が2名もついて教えてくれるスペシャルコースだ。ライティングをセットするところから始まり、モデルとの対話の仕方、成果物への仕上げ方などかなり内容は濃い。ただし受講者全員がベテランということはなく、半数位が初心者なのは意外だった。

◇特に驚いたのは直前にカメラ一式、それもニコンD40Xのレンズキットを買ってきて、現場で新品の箱から取り出して参加したお姉ちゃんがいたことだ。他の受講者にストラップの付け方やモードの設定などを聞いて、最期はなんとか撮れていたようだが、これでは免許を取り立ての人がいきなりスーパーカーを買ってプロ向けドライビングスクールに通うようなものだ。お金があり余っているならそれもアリだが、直前までカメラを買うのがもったいなくてレンタルするか迷っていた普通のお姉ちゃんだ。何か一念発起して思うものがあったのか、それとも何も考えていないのか?それにしてもスゴイ。


セットアップ前のスタジオ、これから講習が始まる

◇実際の撮影は3分ずつ受講者が順番に撮って行く。一般のモデル撮影会とは異なりセッティングされた大きなストロボを使うので1人ずつしか撮れない。後の人は他人が撮るのを見てお勉強するしかない。自分の順番に来ていろいろ人とは違ったカットを撮ろうと頑張ってみたが3分というのはアッという間でなかなか良い作品が撮れない。1日を終え、それなりのカットは撮れたが、圧倒的に良い作品かといえば答えはノーだ。上から俯瞰(ふかん)して撮ってみたり、スカーフを振り回してもらって動きを出したりしたのだが、どうもピッタリとイメージ通りにこない。

◇この研修に何度も通っているベテランいたので、撮り方を見ていると答えが分かってきた。その人はポーズを決めたらあまりモデルを動かさずに、

「じゃあもう少し指輪を外に向けてくれる」

などと微調整するだけなのだ。まさに商品撮影というかブツ撮りの世界なのだ。場所やライティング、モデルのメイクなど全体でいうと9割ほどの段取りはカメラを構える前に完了していて、あとの1割くらいしかカメラマンの技量が入り込む余地がないのだ。ライティングやメイクを提案するところから始めれば作品も違ってくるのだが、このセットじゃ俯瞰したり、大胆に飛び跳ねてもらうことも最初から無理だったのだ。結果としてモデルという対象物を微調整しながらブツ撮りのような感覚が正解だ。結局、時間・高さ・動きの概念が少ないというのが受講してみて勉強したことだ。

◇報道写真だと、いつどこで、どの高さから何ミリで撮る?という概念は基本中の基本で、特に時間軸を気にして決定的瞬間を狙う。時間が不明な場合は長時間張り込み、時間が決まっている時は直前に行って「パシャ、ハイさようなら」という世界だ。そういう時間の意識が常にあると、スタジオ撮影では感覚がずれてしまうのだ。あらゆる空間を使った上に時間軸が加わるので報道の世界は4次元的感覚なのだが、スタジオモデル撮影は左右と前後の移動に若干の上下が入る程度なので2.5次元的感覚なのだ。

◇見たところ受講生12名の殆どは20?30代の若者で、女性が半数というところ。多くは将来的に写真を生業にしたいと思っているような人ばかりだ。スタジオでモデルを前に撮影していると、とても華やかで自分も一流写真家の仲間入りのような感覚になる。それでもって言われた通りにシャッターを切ればそこそこのカットが撮れるのであるから「ひょっとして自分も」なんて思ってしまうのはゴク自然なのだ。そういう一面だけが目に入りプロを目指す若者がウジャウジャいるのだが現実は厳しい。「写真家」という華やかな部分に憧れる若者の大半は時間を消費して『元若者』になってしまうのが現実だ。どの業種もそうであるが影の辛い部分はあまり見えないものだ。

#週末は神戸で撮影会、イチオシの夜景ポイントに大型バスが入れないことが判明。
#今回も先乗りしてロケハンの上、代替案を考えるしかなさそうだ。
#いつものことながら撮影は段取りが大変だ。これを影の辛い部分と言うのであろうか?