コラム

見出し 高齢化と若者の夢
更新時間 2008/03/24 名前 よねやん
本文 ◇500人もの観衆であふれた会場、講演が終わると直ぐに、花やプレゼントを持った若い男女が演壇に駆け寄る。写真家・テラウチマサトさんの講演での出来事だ。先日、PIE(photo imaging expo2008)というカメラショーが東京国際展示場で行われ、そこで特別講演としてテラウチさんが話すことになった。写真家の話はよく聞くが、講演後にファンが駆け寄る姿を見るのは初めてだ。テラウチさんは写真家であり、プロデューサーであり、写真雑誌ファットフォトの編集長でもある。そのライフスタイルが共感を呼び、写真を志す若者に人気があるのだ。有名な写真家の講演会を行うと、大勢の年輩者で会場は埋まるが若者はさほど多くない。カメラマン人口も高齢化が進んでおり、写真は定年後の趣味という考えが大勢を占める。よって写真関係の催し物は「無料」「参加して勉強になる」「有名写真家に会える」などがキーワードになる。真剣に勉強したいのなら3万円くらいセミナーでも安いと思うのだが、そこまで出して参加する人は少ない。やはり趣味の領域だと数千円が限度というところか。

◇これがテラウチさんの場合は異なる。写真の実践セミナーだと1日2?3万円の参加費だが、若い人が直ぐに集まる。高額な海外撮影ツアーがアッと言う間にいっぱいになる。他の写真家では考えられないことだ。直接指導を受けたいということもあるが、身近でテラウチさんの発するオーラから何かを吸収したいという若者が多いのだと思う。

◇90年のバブル崩壊から2000年代に入って企業の徹底的なコスト削減で、若者の労働条件の悪化が社会問題になっている。ここに来て人手不足から就職戦線では売り手市場になっているが、それでも高度成長期に若者が金の卵といわれていた時代とは異なる。決して良くない労働条件の中、カリスマ的写真家のテラウチさんは若者にとって輝いて見えるに違いない。「自分もテラウチさんのように生きてみたい」そのように思っている若者が、多くない収入の中から高い参加費を捻出して集まってくるのだと思う。一昔前、「夢を追いかけるために自分に投資します」みたいな若者がいたが、それに似ている。

◇よく写真クラブの高齢化が進み、実務を担う若者がいなくて困っている話を聞く。決まって「どうすれば若い人が入会しますかねぇ?」などと聞かれることがあるが、それを考えること自体に無理があるのだと思う。元々、年輩と若者の写真に対するスタンスが違っているのだ。年輩の場合は趣味的要素が多いのであるが、そこへ若者を引き込んで実務をやらそうということに無理がある。若者の場合は写真が自己表現であったり、将来の生業であったりするのでクラブに入って趣味を極めるなんて最初から思っていないのだ。ゴルフで例えると会社のゴルフコンペにプロを目指す研修生を無理やり参加させるようなものだ。打開策としては定年間際で体力も残っており、少しパソコンも使えるような人を探してくるしかないと思う。

◇テラウチさんは写真界では異質で、今の大先生たちには認められない部分も多い。ただし20年後、現在夢を追いかけている若手の写真家が主流になれば写真界の勢力図も大きく変わることだろう。少なくとも木村伊兵衛さんや土門挙さんの世界は写真美術館で観るくらいでテラウチさんや平間至さんといった新しい潮流が普通に語られているに違いない。

#「今年は都内の桜を撮るぞ!」といった手前、重い腰をあげて仕事の合間に桜を撮っている。先日、東京で開花宣言があった。次の日の朝、さっそく靖国神社の基準木を撮りにいった。この基準木から東京の桜は始まる。また4月3日には境内にある能楽堂で夜桜を観ながら夜桜能があるというので撮りに行くつもりだ。


靖国神社の基準木、ここが開花すれば開花宣言が行なわれる


この日は天気も良かったのでたくさんの人が基準木を観に来ていた


能楽堂の床を一休さんのように雑巾がけする若者


境内のフリーマーケットも着物があったり一味違う


テラウチさんに花束を渡す若者たち


PIEでモデルに群がるカメラ小僧たち、ここにいる限り写真愛好家の高齢化は感じられないのだが