コラム

見出し 優位性
更新時間 2008/08/26 名前 よねやん
本文 ◇昔、ライカのカメラ1台で家が買えた話は有名だ。終戦前に標準的な家が3000円くらいの時代に2000円もしたそうだ。現在で考えるとカメラが1台2000万円くらいという感覚だ。そんな高級品を買える人は相当な金持ちだったことは疑う余地もない。確かに昔の写真好きは金持ちのボンボンが多かったと聞く。自称ニコン貧乏と名乗る筆者などかわいいものだ。

◇その時代はカメラを持っているだけで一目置かれた。また今のカメラ付き携帯と違って、「普通に写真を撮る」というだけでかなりの技術を必要とした。特殊技能者ということで写真師と呼んだそうだ。要するに写真を撮れるというだけで、人より優位に立てたわけだ。

◇時代は変わり、銀塩カメラが各家庭に行き渡ったころ、更にカメラマンは優位性を保つために大判カメラや交換レンズ、モータードライブといった装備が必要となった。普通のカメラで撮っていてはお金が取れないからだ。多くのレンズやボディをバッグに詰め込み、現場で存在感をアピールすることによって仕事が成り立ったと言って良い。

◇更に時代が変わり今ではデジタルカメラが一般的になった。ピントや露出はピッタリ来るし、三脚を立てなくてもブレずに作品が撮れる。ますますプロは苦しい立場に立たされたと言って良い。例えば、スポーツ写真の場合、走者に全コマピントを送ることなんて一昔前は職人技であったが、今はオートフォーカスでちょっと練習するとかなり撮れる。また高感度なので室内競技なども凄く簡単になった。オリンピックなどの国際大会の場合、ISO400でF2.8、500分の1秒というのが標準的な照度であるが、今のデジタルカメラにとっては昼間みたいなものだ。ISO3200ならF5.6、1000分の1秒で切れる。安い400ミリのレンズを使ってもそこそこ室内スポーツが撮れるのだ。

◇このような状況なのでプロとして優位性を保つのは大変になってきている。例えば、読者がちょっとした写真を1枚必要な時にわざわざ数万円もギャラを払って撮影依頼するだろうか?筆者だったらそのお金で高級なコンパクトデジカメでも買って自分で済ませようとするだろう。

◇ただし、デジタルが普及し始めて約10年経ったが、これまでの銀塩カメラでは撮れなかったプロでも知らない世界がまだまだ存在するのも確かだ。前々回(見出し「トラブル」)で書いたように花火の写真にしても長時間露光じゃなく高速シャッターを切ることによって全く違った世界を表現することができた。防水のコンパクトデジカメを使うとモデル撮影ならば水中からのモデルさんを撮ることができたりする。これは9月に東京YPCの写真教室で紹介するつもりだが、顕微鏡にデジタルカメラをつけると観たことのないミクロの世界を収めることもできる。

◇写真の優位性はひと昔前であればお金で解決できる部分が多かった。今は機材が安くなったのだが、反面、頭で解決する部分が増えてきた。コンピュータの知識、画像処理や色空間の知識、インターネットの知識・・などなど、ただ撮るだけでは優位性が保てなくなってきている。世の中すべてに共通すると思うが、人と同じようにやるのは初心者の時だけで十分、それから先に行くには試行錯誤してその群れから抜け出すしかない。これは写真の世界に限らないだろう。


10月21日?22日に
「読売新聞の現役カメラマンが同行する喜多方と会津西街道撮影紀行2日間」

というツアーを読売旅行が企画し、筆者が同行することになった。前から言っている通り「写真は段取りが大切」なので休みの日に一通り下見をしてきた。撮影の段取りはこれでばっちりだ。興味ある方は読売旅行(03-3270-6165)まで




喜多方で小さな祭りが行われていた。宣伝不足か観光客はまばら


山車を軒先で見物する地元の人、都会じゃ見られない光景だ


湯野上温泉駅では日本で唯一、かやぶきの駅舎が撮影できる


大内宿はどこを撮っても絵になる


大内宿では水路がポイント


「塔のへつり」は紅葉の季節がぴったり合えば凄い作品が撮れるであろう