コラム

見出し 写真の原点
更新時間 2010/05/26 名前 よねやん
本文 ◇よく年配の写真家で「写真の原点は針穴カメラ(ピンホールカメラ)だ!」と言う人がいる。自らも針穴写真を撮影し、独特のボケ味や甘い描写の世界に引き込まれてしまう。初心者や子供をつかまえて写真教室などを熱心に行っている。確かに現在の高い描写性能を持ったレンズと比べると変わった作品に仕上がるが、それが昔の味で原点だというのは、あまりにも勉強不足だ。はっきり言おう、写真の原点は針穴では無い。むしろ針穴は機材が発達したことにより実現したものなのだ。

◇ここで復習をしておこう。針穴カメラとはカメラのレンズの代わりに、針で小さな穴を開けた板を置き、そこから洩れる光を使って撮影するものだ。針穴が大きいと映る像は明るくなるがピントが甘くなる。逆に針穴が小さいとシャープに写るが暗くなり露光時間がかかる。またあまりにも針穴が小さいと、光の回折現象で逆にシャープさがなくなってくる。直径0.2ミリの針穴くらいが良いとされている。針穴といっても今は針で穴を開けない。キレイに小さな穴が開けられないからだ。レーザーで正確に開けたものが針穴写真家には好まれている。

◇古代ギリシャ時代、木漏れ日や壁の穴から映った景色から針穴の現象が発見されたといわれている。ただ、そこで写真が発明されたわけではなく、更に約2000年の時を待つことになる。1827年フランス人のニエプスが人類初の写真撮影に成功した。これが写真の原点だといえるが、撮影機材はレンズとアスファルトを使用した感材で、針穴はどこにも出てこない。当時の感材はレンズの明るい光で感光しても8時間を要したので、薄暗い針穴なんて選択肢になかったのだ。戦後にドイツの持つ感材技術がアメリカに接収され、高感度フィルムが出たので針穴写真が可能になったといえる。

◇多分、針穴写真が写真の原点だという人は、写真が200年もの歴史があるなど時代考証も行わず、イメージだけで語っているだけに違いない。仮に写真家を名乗りたいなら、やはりそのへんの背景は勉強して押さえておきたいところである。

◇写真は初心者にやさしい。それは機材の発達により誰でも簡単に撮影できるようになったのが大きな原因で、また平凡な写真を撮っても、見る人によっては高い評価を与えてくれるからだ。しかし、カメラの歴史や機材の構造、画像に関する知識など勉強すべきものは多く、先人の努力の積み重ねが今の写真文化を形成させているといっても過言ではない。

◇例えば、前記に「小さな針穴はシャープさがなくなる」と書いたが、その理屈を理解すると、現在のデジカメで絞りすぎるとモヤモヤした結像になる理由が理解できる。「私はプログラムモードで撮影するだけ。機材よりも撮るほうに専念します」という考えもアリだが、その場合はプログラムで撮れる写真以上のものは撮れないということを言っておきたい。歴史的背景を理解すると、とても細い線で現在につながっており、それが作品作りにとても弱い力で影響しているのが面白い。よくピアノ奏者がバロックや古典派などをきっちり勉強するように、デジタルカメラ時代の写真家であっても、銀塩時代を学ぶことはムダではなさそうである。


札幌市の百合が原公園、札幌駅から近いが花がとてもきれいだ


これも札幌市の百合が原公園


雨の日の大洗海岸


ひたち海浜公園でパノラマ撮影