コラム

見出し 光のコントロール
更新時間 2011/05/24 名前 よねやん
本文 ◇風景写真を極めると、「何月何日の何時ころ、どこへ行けば素晴らしい光景が収められる」というような情報が蓄積されてゆく。通常は早朝か夕暮れに、おいしい時間帯が集まっている。特に年配の方にとって早朝は活動時間にぴったり合い、風景写真が好まれる一つの理由でもある。納得できる場面に出会えるまでに何年もかかることはザラだ。

◇ここで考えてみよう。風景写真において撮影者が光をコントロールすることがあるだろうか?これがほとんど無いのだ。ストロボ光を使うなどあるかも知れないが、「あるがままを撮る」というのが基本なので、自分で光を作って行くことは無いのだ。「じっと光ができるのを何年も待つ」というのが風景写真の基本ではないだろうか。風景写真家である緑川洋一先生が「光の魔術師」と言われていたが、今になって考えると「光を待つ魔術師」であって、決して光を魔法で操っていたわけではない。

◇モデル撮影の場合は、これとは全く逆で、光を作らないと撮ることはできない。自然のまましか撮影しない流儀の写真家もいるが、それでも良い光の場面でシャッターを切っているのだから、五十歩百歩というところだ。通常、屋外の撮影ならレフ板で光を当てたり、日中シンクロしたりする。屋内なら、アンブレラやトレーシングペーパー越しにストロボ光を当てたりする。じっと待っていても何も変化はないので、自分で段取りを組まないと前には進めないのだ。

◇モデル撮影会できれいに撮るポイントは、この光をコントロールできているグループのモデルさんに付いて回ることだ。いくらフォトジェニックなモデルさんでも、光の条件が悪ければきれいに撮れない。撮影会によっては撮影指導の先生が付くので、ちゃんと光が作れる先生を見抜くのもポイントになる。基礎からライティングを勉強した先生なら良いが、例えば風景写真しか撮ったことの無い先生にモデル撮影会の指導は無理だ。多分、自分の分かる範囲で「この風景とモデルさんを絡ませなさい」など、もっともらしい指導をするだけで、仕上がりの悪さは容易に想像できるというものだ。

◇光のコントロールとは、基本は明るい部分と暗い部分をコントロールすることが主だが、最近はデジカメがメインなので、光源の色温度なども重要な要素になる。例えば、背景が太陽光なのに、手前にタングステン光を当てると、色のバランスが崩れてしまう。ストロボ光だと、デフューザーの使い方一つで柔らかい光から、攻撃的な強い光まで使い分けられる。光源の高さや距離でも表現が大きく変わる。とにかく奥が深いのだ。

◇モデル撮影会では、作られた光を撮る場合が多いのだが、実は裏方であるレフ板係が一番勉強になるような気がする。ただモデルさんの顔が明るくなるように、レフ板を向けるのではなく、高さや距離などを考えて当ててみると、光の表現が大きく変化することに気づく。後で別の人が撮った画像を見せてもらって、フィードバックすると更に光が分かってくる。よく撮影会でレフ板係をやって、ほとんど撮影できない人がいるが、長い目で見れば大きな勉強になっているのだ。モデル撮影会に参加しても、良い光とポーズをじっと待って、撮っている人がいるが、そういう人は風景写真の延長線上で撮っているだけで、それ以上の進歩は望めないように思う。自分で光と場面を作ってゆくのがモデル撮影の醍醐味なのだ。


スタジオでちょうちんを作っているところ
ストロボ光が柔らかくなる



赤外線フィルタ(ケンコーR72)で撮影、幻想的な作品に仕上がる