コラム

見出し 段取り
更新時間 2012/02/26 名前 よねやん
本文 ◇2012年2月19日(日)、東京ディズニーランドの南側の海岸へ出かけた。東京ゲートブリッジが開通し、ちょうどダイヤモンド富士が一直線に重なって撮れるという話を聞いたからだ。その日は天候も最高、日没の20分前に予定通り現地に到着した。大体どの場所から撮れば良いか段取りも万全、400ミリF2.8のレンズにニコンD3を準備して何もかも完璧な筈だった。が、現着すると遠くに巨大脚立で構えている人がいる。嫌な予感!近くまで行くと背丈よりも高い堤防があって脚立が無いと撮れないのだ。

◇かなり焦って、巨大脚立のおじさんに「脚立無しで撮れるポジション知りませんか?」と聞いたら堤防の端まで行って、海岸線を回って堤防の海側から撮れば良いとのこと。「ただし、歩いて30分ほどかかるよ」という言葉で、筆者のその日のミッション終了を告げられた。走っても間に合わないのだ。

◇東日本大震災の後、津波被害が見直されており、浦安市では5メートルくらいの波が想定されるらしい。東京ディズニーランドから強く要望されたからか分からないが、震災後すぐに堤防の整備工事が始まったようだ。仕事だったら1時間以上前にスタンバイし想定外に備えるのだが、簡単に撮れるとタカをくくって出かけた筆者が悪いのだ。何とか堤防の隙間から撮ったが、ゲートブリッジとダイヤモンド富士が一直線に重ならず写真的には悔いの残る1枚となった。




◇よく写真教室で話すのだが写真において「段取り」は重要だ。良い作品を撮るには、何度も何度も通うという人もいるが、それはアマチュアの世界。それでは効率が悪いので、段取りを十分にして確率を上げて撮影現場に向かう方がうまい撮り手といえよう。今回の場合は自慢できないが、富士山が見えそうな天気、ちょうどダイアモンド富士が撮れる日時、レンズはフルサイズで400ミリなど条件を揃えた上で一応現地に向かったのだ。最近ではネットで情報検索ができるので簡単だ。ITを駆使できる人が撮影にも有利になってきている気がする。余談だがこれをデジタルデバイド(情報格差)という。

◇パソコンなど使わない人はどうすれば良いか?一番良いのはうまい人と一緒に撮影することだ。筆者もそうだが、撮り方が分からない場合は、うまい人を見つけてその横で撮るようにしている。今回の場合は、巨大脚立のおじさんということになるが、残念ながら装備不足で同じ位置から撮ることができなかった。撮影ポジションに行くと一見してうまい人が分かるものだ。撮る前に周りを見渡すことをお勧めする。本当にうまい人、何回も通い続けた割りにつまらない写真しか撮れない人、最初から他人とは違う写真を狙っている人、自分は達人だと勘違いしている人、などなど装備やポジションを見ていると大体の想像がつくものだ。

◇ちなみに巨大脚立のおじさんは「苦労の末、絵ハガキのような完璧でありふれた写真を撮る人」位の位置づけだ。もう一度トライすれば、良い写真が撮れると思うが、絵葉にしかならないと分かったので、ゲートブリッジはこれ以上の深追いはしないつもりだ。新名所と言えど、あと2?3ヶ月もするとフォトコン雑誌でたくさんのゲートブリッジが紹介され、見慣れた作品になるに違いない。スカイツリーの時もそうだった。今やベタなスカイツリーでは誰も感動しない。それくらい作品の賞味期限が短くなっているのだ。それはインターネットで調べて撮りに行く人が多いので、すぐに撮られていない作品の隙間が埋まってしまい、様々な画像が世の中に氾濫するためだと思われる。

◇土門拳が秋田県でかまくらを撮って紹介し、「これがかまくらか!」と感動した時代もあった。タルボットがカロタイプの写真を発明し、写真集で世界の様子が紹介された時などは皆がびっくりしたはずだ。そういう情報が乏しい時代に発表された写真は、深く人の心にしみこんだに違いない。銀塩がデジタルに変わった以上に他の面で、世の中の仕組みが変わってきている。難しい時代になった。