コラム

見出し 写真界の行き詰まり
更新時間 2015/02/22 名前 よねやん
本文 ◇比較明合成は「ひかくめいごうせい」と呼ぶ。今日はちょっと難しいが、合成処理についてレッスンする。

◇デジカメは銀塩フィルムと異なり、長時間露光が苦手だ。フィルムは長時間露光しても、暗いところは暗いままでノイズは出ない。対するデジカメはせいぜい30秒位が限度で、それ以上露光するとノイズだらけで使い物にならない。例えば、星の日周運動を撮影する場合は、1時間くらい長時間露光をかけないと面白い光跡にならない。そこで比較明合成が必要というわけだ。大体、10秒位の露光で続けて何百枚も撮影し、それを合成ソフトで重ね合わせれば光跡写真ができあがるのだ。

◇「比較明合成」とは複数画像を比較して、明るい部分があればそれを優先して表示させる合成方法だ。夜空に星が写っている部分と、暗い夜空があれば、星を表示させる。




拡大すると切れ目があるのが分かる

◇この写真は14秒露光で250枚撮影した画像を比較明合成したものだ。普通の光跡のように見えるが拡大して見ると切れ目があるのが分かる。コマ間のミラーの上げ下げの時間は写っていないからだ。250枚というと約1時間だが、その間レリーズで押し続けるのは大変だ。そこで今のデジタルカメラにはインターバルタイマー機能がついていて、自動でレリーズしてくれる。三脚にセットして撮れば寝ていても大丈夫だ。よく星を撮る人は、車で待機する場合が多い。

◇比較明合成処理はフリーのソフト「KikuchiMagick(キクチマジック)」というのがあり、初心者でも簡単に合成ができる。ただ、理屈では分かっていても実際にやってみると、細かいレシピみたいなものがあって、何度か挑戦してみて満足のできるものが撮れる。天体写真は興味無いという人も是非練習のために挑戦してみて欲しい。

◇また比較明合成は天体写真だけに留まらず、夜景などにも使える。


お決まりの写真

◇これは、隅田川大橋から屋形船の光跡をいれてスカイツリーを収めたものだ。35mmの短焦点レンズを用い、露出はISO32、F16、30秒で撮ればこうなる。ただ、これでは光跡が寂しいので、屋形船が来る度に撮り続け、それを比較明合成すると、にぎやかな隅田川が出来上がりだ。


屋形船の作品としては十分なのだが

これ位撮れれば、大満足なのだが、欲が出て、更に1時間ほど星を中心に撮り、それを合成したら次のようになった。少し非現実な写真になったが、裏を返せばこれまで撮れなかった世界なので面白いと思う。


最終形、星の光跡も入れるとこうなる

◇機材やソフトの進歩で、見慣れない作品が世に出るようになった。ただこれも見慣れてしまえば、ただの写真に成り下がってしまう。カメラマンとしては更に技術の進歩を見極めながら、新しい作品を模索する必要がある。昔の写真師のように、誰もマネできないようなレシピがあるわけでは無いので、 今のカメラマンは大変だ。技術の進歩が専門領域を日々侵食するのだから。よくフリーのカメラマンが言っているが、仕事の単価がデジカメに変わり一桁下がってしまったと。昔だったら、ちょっと手の込んだ仕事で30万円くらいの売り上げがあったが、今や3万円という話もある。もはやこれはスキルに対して払う対価では無く、「行って撮影する」という労働に対しての対価だ。 前回のコラムで書いた写真の世界観の難しさと相まって、どんどん写真界が行き詰っている気がする。