コラム

見出し 不可能の三角形
更新時間 2015/06/28 名前 よねやん
本文 ◇読売新聞東京本社の社屋が新しくなって1年あまりが過ぎた。その間、意外と見学希望者が多く、頻繁に入館手続きを行って社内を案内している。ただ、案内するだけでは面白くないので「大手町・丸の内・有楽町地区・まちづくり協議会」が出している分厚い資料を読み込んだり、建築基準法の資料を読み直したりして、大手町の街づくりの姿もかなり勉強した。大丸有(大手町・丸の内・有楽町=だいまるゆう)地区の街づくりの一環として社屋を見たかったからだ。

◇大手町・丸の内地区で一番面白いのは、すり鉢制限と呼ばれるビルの高さ制限だ。皇居に近づくにつれ、高い建物が建てられなくなり、皇居を中心としたすり鉢ができあがっている。読売新聞ビルは皇居に面していないが、このすり鉢制限のおかげで展望台といえる32階からは皇居が一望できる。皇居の緑を借景とする考えは、いかにも日本的だ。

◇大手町ー有楽町を結ぶ「丸の内仲通り」は高級ブランド店やカフェが立ち並び、世界に誇れる空間が出来上がっている。これもまちづくり協議会が決めたガイドラインが大きく影響している。看板は電光等を避け、道幅は広く、緑にあふれている。森ビル、大成建設など冠たる企業が名を連ね、街をデザインするのだから悪いはずがない。

◇そのような街づくりは景気や企業業績に関係なく、1996年から続けているそうだ。途中で「やーめた、地方に移転します」という企業では参加できない。大丸有地区の住人になるには決意と景気に左右されない体力が必要なのだ。

◇さて写真の話。日本写真家協会(JPS)の会長が田沼武能先生から熊切圭介先生に変わった。どちらも東京YPCの顧問でもある。会長を退任された田沼先生は1995年より20年に渡りJPSを運営され、就任当時の写真団体が玉石混交とした中、JPSブランドの地歩を固めた。また熊切先生には今後も東京YPCの月例審査会に来ていただく予定だが、JPSの会長職は激務なので回数が減るかも知れない。またご存知の方も多いが、熊切先生は現役にこだわる写真家でもある。会長職に就かれると撮影機会が減るだろうから、他人事ながら心配になってしまう。写真業界も簡単な撮影をJPS会長に依頼することはできないし、写真家は偉くなればなるほど撮影機会が減る傾向にある。そこをバランスさせるのに苦労すると言われる。

◇少し難しくなるが不可能の三角形(トリレンマ)という考え方があり、三角形の頂点に3つの目標を掲げてみると、同時には2つまでしか実現できないという法則がある。写真家で例えると、
「自由な創作活動」
「収入の安定」
「社会的地位」
であろう。JPSの会長になると「社会的地位」は上がり、収入は安定するだろうが激務で創作活動どころではなくなる。駆け出しの写真家は「自由な創作活動」こそできるが、他の2つは成立しない。新聞社のカメラマンは、言われた場所に行って、紙面に収まりの良い写真を撮る場合がほとんどなので「自由な創作活動」はできない。仕事というものは何でもそうで、妥協が必要なのだ。


銀座は外国人観光客にあふれ、
日本とは思えない賑わいだ



どこでも座り込むのがアジア的


日本橋三越で