コラム

見出し 何でも屋
更新時間 2015/08/29 名前 よねやん
本文 ◇戦後70年企画やらなんやらで仕事が忙しいのだが、写真の学校だけは週1度夜間に通っている。スタジオのライティングがメインで、プロを目指す若者をターゲットにしたクラスだ。実際に通ってみると、若者の受講はほとんど無く、趣味の写真を仕事にしたいと思っているサラリーマンが中心だ。今のクラスは4人しかいなくて、筆者を除くと30歳くらいの美容師、45歳くらいの広告関係の人、55歳くらいのサラリーマンという構成だ。

◇学校としては15名のクラスを想定しているのだが、本当にプロを目指すなら、東京ビジュアルアーツなどの本格的な学校へ行くらしくて、「何となくプロカメラマン」というクラスには人が集まらないらしい。

◇そんなクラスになぜ筆者が行くと思われるかも知れないが、4人でモデルを本格スタジオで撮影するというのは、勉強になるのはもちろん、お得感があり贅沢な授業だからだ。講師陣も人によって言うことがバラバラで、仕事の流儀もさまざま、真逆なことを言われることも多く、一般の生徒なら誰を信じて良いのか分からなくなるところだ。ただ冷静に見ると講師ごとに長所短所がよく見えるので、教える内容は別にして、反面教師という見地から学ぶことが多いのだ。

◇ある講師による、夜のモデル撮影実習があった。実習に出る前に、「じゃあどこで撮ろうか?」の言葉に唖然。筆者が講師なら完璧にロケハンをして、「今日はこういう予定で撮ります」で実行されるのだが、その講師の段取りの悪さと言ったら理解を超えるものがあった。挙句の果てに生徒の一人が「スクランブル交差点で背景の人を流しながらモデルが止まって見える作品を撮りたいです」の一言で、重い三脚を担いで、交差点へ行く。三脚をセットして撮ろうとすると通行人から「邪魔だ」の声の大合唱。とても撮影できる状況では無く、3分で退散、この段取りの悪さ、現場での対応力の無さは、とてもプロのレベルでは無い。

◇いそいそと退散し、今度は誰もいない公園に行くが、暗すぎて面白みはゼロ。行く途中で絵になる場所が2−3箇所あったが、一応筆者は生徒なので、先生に進言することも無く、はがゆい思いをする。実はその先生による、同様の撮影実習が3週間後にあるが、今度は筆者が完璧にロケハンして「ここで撮りましょう」で流れを作りたいと思う。絵にならない夜の公園で、使いもしない重い三脚を持って歩くのはコリゴリなので。

◇いろんな講師陣を見ていると、物撮りなら誰にも負けません、200種類のスタジオライティングを操れます、写真のブック作成は任せてください、というような特化した技術を持っているカメラマンが多い。筆者のように、何でも撮ります、画像処理なら何でもわかります、パソコンが得意です、文章も書けます、セミナーで喋れます、というような何でも屋は珍しいように思える。特徴の無いのが特徴なのだ。悲しいかな、何でもやらされ、何でもできるようになるというのは、いかにもサラリーマン的で、尖った専門性の強い写真家とは対極にいるような気がする。

◇次の1月に東京YPCの月例審査で熊切大輔先生に審査していただく予定だ。最近、サラリーマンをやめ、JPS会長である熊切圭介先生の跡を継ぐべく写真家として活躍されている方だ。スタッフカメラマン出身なので、撮影からセミナー、審査と何でもそつなくこなすことができる。熊切大輔先生の場合、サラリーマン経験というのが、とてつもなく活きているように見える。

◇普通、写真家というのは堂々巡りをしながら自分の専門を見つけて、認められるような部分がある。そうすると専門以外のことは全くの素人で終わることになる。それこそ専門以外は何も撮れない写真家はごろごろいる。そういう写真家の中でマルチプレーヤーである熊切大輔先生は有望株の一人だと思っている。次の審査が楽しみだ。


学校の物撮り研修より、
会社で時間をかけてこのようなライティングを
したら「アホか」で一蹴されると思う



2015浅草サンバカーニバルより


2015浅草サンバカーニバルより