コラム

見出し 目を行かせる
更新時間 2015/12/19 名前 よねやん
本文 ◇「目を行かせる」という言葉はプロの編集者やカメラマンの間で日常的に使われる。例えば、電車の中吊り広告で「忍び寄る老後破産」と掲載されると、高齢者なら一瞬で目が行き、その前後に「貯金三千万円でも足りない現実」「想定外は孫の教育費」など書かれていると、真剣に読み込んでしまい、買ってみようと思うだろう。想定どおりに目線を誘導し、購読に結びつける、プロの編集者の仕事だ。

◇コンビニの雑誌だって、目を行かせる配慮をしている。コンビで雑誌はまず平積みされることが無く、棚に立てられて表紙の上の部分が突き出す展示となる。よって上部ぎりぎりにきれいなお姉さんを配したり、気になる言葉を入れたりして目を行かせる工夫をしている。


上部ギリギリにお姉さんの顔、
典型的な目線の誘導だ



週刊現代と分かり、上部に気になる単語が


ひよこクラブは平積みも考慮したデザイン

◇写真の作品も、「目を行かせる」配慮が必要だ。当然、目が釘付けになるような傑作写真を撮るように心がけていると言う人は50点、撮影後に目を行かせる仕上げ方まで配慮していれば後の50点が加点されるので注意をして欲しい。

◇作例は北鎌倉の長寿寺で撮られたものである。あまり宣伝に積極的ではなく、限定日だけひっそりと公開される。基本的に参拝客のために解放するので、大挙して押しかける写真愛好家は入れてくれない。通路で粘って撮影もできないが、カメラを持ち込みちょこっと撮る分にはOKである。このコマは庭を正座で鑑賞するふりをして、参拝客がいなくなるのを待ち撮ったものだ。

注意点は適正なホワイトバランスと露出である。どこを中心に露出を合わせるということは行わず、室内外すべてに階調を残し、後から補正がしやすいように撮るということだ。作品を撮るというよりは、状況をデータに余さずスキャンするという感覚だ。これだと作品の狙いが不明瞭で、このままプリントしてもせいぜい40点位なのだが、補正を行う写真素材としては100点満点なのだ。

◇まず目を行かせたいのが、外のモミジの紅葉だ。そのためには室内をある程度暗く表現する。そうすると一見してモミジに目が行く。またホワイトバランスをモミジ中心に撮ったので室内の赤味が増している。このシャドー部の赤味を払い、色転びの無い暗部にする。また暗部の面積が大きいために、少し掛け軸を出してアクセントにすることにした。下が最終的に仕上げた作品だ。補正前と比べるとずいぶん印象が異なるだろう。最初に紅葉、次に掛け軸、最後に室内の様子という順序で目を行かせることができた。室内が明るい作品のままだと、最初に室内に目が行き、紅葉がオマケになる恐れがある。それだけ目線の誘導順序は重要だ。


最終形、少し補正するだけで大きく印象が異なる