コラム

見出し 大政奉還
更新時間 2017/01/22 名前 よねやん
本文 ◇1月21日、京都市・二条城で富士フイルムの新製品発表会で中判デジタルカメラ「GFX 50s」が華々しくデビューした。かつて富士フイルムは中判カメラを数多く世に送り出しており、名機と呼ばれるものも多い。遠い昔であるが、筆者もGW690という6×9cmサイズの富士フイルム製の中判カメラを記念写真で使っていた。よくお宮の写真館で使われていた定番カメラだ。そのころから35mm判カメラはニコンが強く、富士フイルムは業務用中心の、隙間を狙ったラインナップが得意だった。

◇キーワードは「大政奉還」。別次元の画質を可能とした中判サイズのカメラで一気に新しいユーザーを取り込もうという作戦だ。その歴史の舞台となった二条城での発表会は日本を代表する写真家が大勢ゲストとして招かれ、プレゼンターはいまや伝説化した平成の名経営者・古森重隆氏だ。招かれた写真家に聞いたが、盛大なイベントで富士フイルムの並々ならぬ決意を感じたそうだ。

◇公開された実画像→ ココ を見ると、フルサイズとは別次元なのが一目で分かる。これなら6畳くらいに印刷してもきれいなので、広告業界では好んで利用するだろう。ミラーレスなので825gと、筆者の使っているニコンD810の880gよりも軽い。ミラーの振動が無いので手振れも軽減できる。課題はブレ防止がついていないということだ。せいぜい半切にしかプリントしないアマチュアカメラマンが100万円も出して必要とするかと言えば疑問だが、高画質を要求する一部のカメラマンからは絶大な支持を得るに違いない。

 「大政奉還」とはこじつけのような気もするが、まさにデジカメが第二次戦国時代を迎えた感じもする。第一次戦国時代はシェア争いであった。とにかくメーカーが自社の製品を使ってもらおうと血まなこになった2000年代前半の頃だ。入門機としてコンパクトカメラに力を注ぎ、出世魚のように自社のAPS−C機⇒フルサイズ機に誘い込む作戦だ。ところがスマートフォンの出現で、カメラの入門機がiPhoneやXperiaに変わってしまった。どのメーカーもコンパクトデジカメでは儲からず、またその上の中級機もスマートフォンが侵食してきて売れなくなっていると聞く。結局、デジタル一眼は値段が高く、扱いが難しいので、ファインダーで覗いた画像がそのまま保存できるミラーレスが主戦場になってきた感じだ。カメラコーナーに行くと、オリンパスのマイクロフォーサーズ機の前に女子の人だかりができていて他はパッとしない。

◇今の第二次戦国時代は、用途に合わせていかにユーザーを囲い込むかだ。そんなこと承知で古森重隆氏が矢を放ったわけだから、ごく一部のユーザーの心を射抜くことは間違いない。主に単価の高い広告写真を撮る写真家や風景写真を撮るハイアマチュア、美術品を収める写真家などがターゲットだと思う。報道業界では今は必要無いと思うが、ミラー式の一眼レフは限界に来ていると思われるので将来的には「GFX 50s」のようなミラーレスに置き換わる可能性が大きいと思うのだ。意外と数年の内にバタバタっと勢力図が変わるかも知れない。カメラマンというのはかなり保守的で、うまく行っているうちは流儀を変えない。ただ、それにあぐらをかいていると、ライバルに抜かれて干されてしまったりする。最近の話で言うと、最後まで銀塩の方が画質が良いと踏ん張っていた人たちだ。注意が必要だ。


筆者のGW690。かなり大きく、1500gくらいある。