コラム

見出し 芸者
更新時間 2017/02/22 名前 よねやん
本文 ◇よみうり写真大賞の審査員に写真家の安珠さんが加わった。いまさら紹介するまでも無いが、長身の元モデルさんで注目されている写真家だ。現れると一瞬で華やかなムードに審査会場が包まれた。写真家によっては存在感が無く、それはそれで撮影の時に現場の雰囲気に溶け込めるというメリットはあるのだろうが、安珠さんの場合はその対極にあるといっても良い。とにかく「安珠さんがいる」というオーラが凄いのだ。

◇初対面の人には丁寧に挨拶を行い、審査では田沼先生を立てつつ、言うべきところは言うというバランスに優れ、気がつけば会場は安珠ワールドに変わっていた。モデル出身というのが大きいと思う。モデルの世界では上下関係が厳しく、その中で自分を主張しないと生き残れない。まさにその延長線上に写真家・安珠さんが存在するのだ。

◇普通写真家を目指す人は、スタジオや有名写真家のアシスタントを行い、業界ルールや対人関係を学習する。そこで対人関係が苦手な人は、早々にアシスタントを辞め、自分の作品作りに没頭する場合もあるが、世の中そんなに甘くない。「そのうち自分の作品が認められるだろう」などと思って殻に閉じこもる人は必ず行き詰る。まず被写体とのコミュニケーションが取れないので、風景系の作風に傾倒してしまい、作品に幅が出なくなる。パブリシティにおいても、雑誌編集者とのパイプが作れないので、作品が世に出て行かない。作品を撮る前にニンゲンとして修行しないとすべてが始まらないのだ。

◇その点、安珠さんは作品を撮る前に、モデル時代に人として修行しているので強いのだと思う。前にも言ったと思うが、写真家であるための必要条件は


1)対人関係がしっかり保てること
2)しゃべって、文章を書けること
3)写真が撮れること


◇この3つだと思う。若い写真家志望の人を見ると(3)の写真を撮ることばかりに気が言っている感じがする。確かに(3)は写真家の必要条件であるが、十分条件では無い。(1)(2)ができて初めて(3)の評価が下るのだ。

◇逆に(2)のしゃべりだけがうまく、どんどん有名になってしまう写真家もいる。機材に詳しくテクニカルライター的な写真家などだ。CP+のブースで説明しているような写真家に多い。

◇要するに撮影という芸ができて、クライアントというパトロンとしっかり対人関係を保ち、審査会などのお座敷で盛り上げる、そのように芸者のようなスキルが写真家には必要だと思うのだ。どこへでも旅ができ、撮影が簡単になった現在、写真が撮れるだけでは優位性がなくなった。写真が撮れて現像できるだけでお金になっていた時代が懐かしいが、そのような旧石器時代の写真家は生き残れないだろう。

◇少し失礼な言い方になるが亡くなった写真家・管洋志先生も芸者的なツボをわきまえていたのを思い出した。YPCのセミナーで大洗海岸へ行った時のこと。研修会が終わり、バラバラにバスに乗り全国へ帰ってゆくYPC会員を、一人ずつ激励しながら送り出されていたのだ。そんなことする大写真家に驚いたし、同じ場面は川島英五のライブでしか見たことなかった。

結論!写真家から芸者にはなれないが、逆は比較的易しいと思う。


自分史上一番とも言える失敗作品
1995年頃、北海道の石狩灯台に行った時の帰り道
山盛りのニンジンに群がる子馬たち
今の自分だったら牧場主に許可を取りいろんな角度から
絶好のこの場面を撮りきると思う
なんと当時の筆者は、車の窓からパシッと1枚
切っただけだ。悔やまれる一枚となった。