コラム

見出し 36枚に押し込める
更新時間 2017/06/17 名前 よねやん
本文 ◇今日はカメラの撮影枚数の話をする。写真好きの人が月に2−3日撮影に出かけるとして、1日300枚ほど撮っても、せいぜい1ヶ月に1000枚くらいの撮影枚数にしかならない。1年で1万枚として、4年も使えば次のカメラが欲しくなるので、買い換えるまで酷使したとしても5万枚が限度だろう。細かい話だが、20万円のカメラが買い替え時に5万円で下取りされたとして、 (20万円−5万円)÷5万枚=3円/枚 となり1枚あたり3円のコストとなり、やはりデジカメは安上がりということになる。

◇これが報道でプロ野球担当をしていると別次元の撮影枚数になる。ピッチャーがボールを投げるごとに2−3枚はシャッターを切るので、1試合あたり普通は1000枚くらいの撮影枚数になる。それが150試合ほどあり、キャンプなどを入れると1年間で約20万枚の撮影枚数になり、ちょうどカメラのシャッターの耐久枚数に達する。シーズン終了後にシャッターユニットを交換ということになる。

◇銀塩フィルムの時代はどうしていたかと言うと、やはり大量にフィルムを使用していた。残り5枚を切ると、何かあるとダメなので、新しいフィルムに入れ変えていた。また記録のかかったバッターが打席に入ると、フィルムが残り15枚でも心もとないので、新しいフィルムを入れなおしていた。今のカメラより連写が効かず36枚撮りフィルムという効率の悪いものだったので、確か1試合で30本くらいは使っていたと思う。

◇今日、審査で熊切大輔先生に来ていただいたが、上記の話題になり懐かしみながら野球の難しさについて語られていた。熊切先生は以前にスポーツ紙でカメラマンをされており、野球も3年ほど担当されたそうだ。試合展開とフィルムの残りコマ数についてはかなり熱く語られていた。

◇最後に、殆ど撮らない見事な撮影の話をする。1970年代に撮られた、手術の場面を撮った36枚撮りのフィルムが出てきて、見たカメラマンが異口同音に撮影技術の高さを絶賛したことがあった。とにかく無駄コマが無く、いろんな視点のコマを36枚の中に押し込めているのだ。おそらく、手術室ではレンズやフィルムの交換もできず、35−70mmだけで撮り切ったと思われ、丁寧に撮られた1枚1枚に、主張が感じられた。先人の仕事について驚くばかりだ。今のデジカメだと、いらないコマでも一応撮ったり、画角やピント位置を変えて撮ったりするので、おそらく数百枚は撮影すると思われる。今は必要とされるコマが全て用意されていないと怒られ、現代なりの仕事の難しさがあるが、システマチックで美しさは微塵も感じられない。大量の撮影枚数は、ビデオを撮影しているようなもので「この1枚を自分は伝えたい」というような主張が無く、デジカメになってつまらなくなった部分でもある。

◇少なくとも36枚の世界に押し込めていた頃は、誰もが写真を撮れる時代では無かったのでカメラマンも専門性が高く、プライドを持ちながら撮っていたはずだ。誰もが大量に撮れるようになった今日、食えないカメラマンが増えるだけで、仕事に美しさも何も無いので寂しさを感じる。


武蔵小杉駅の東急スクエアにある展望デッキ
とある撮影ツアーで紹介されていたので下見に行ったが
ガラス越しでふかんの角度も悪く少なくとも
お勧めポイントでは無いことが判明