コラム

見出し ホワイトバランス
更新時間 2017/08/23 名前 よねやん
本文 ◇新聞の場合、人物中心の写真が多くなり、撮影場所は結果的に7割位が室内になる。室内写真の一つの注意点としてとして、ホワイトバランスがある。室内はさまざまな光源が混ざり合い、デジカメで撮る場合にきれいな色で収めることができないのだ。銀塩時代は、露出と図柄さえしっかり収めていれば、色はプリント段階での作業なので、たとえ悪い色で掲載されても、撮影者が非難されることは少なかった。また紙面自体もモノクロ掲載が多かったので図柄(形や構図など)が重要視された。そもそも昔は写真があるだけで良いという時代だったので、デジタル以前の紙面を今見ると驚くほど画質(色、ピント、画質のキレ)が悪い。

◇デジカメ時代になり、新聞制作がシステム化されると撮ったデータがそのまま紙面に掲載されることが多いので、例えば少し黄色に色かぶりして撮ってしまえば、黄色い写真が掲載される。デジカメで撮影が簡単になった反面、別の部分で難易度は増している。

◇ホワイトバランスはオートで十分と思っている方は、「それなり」の作品しか撮れない。室内では蛍光灯、電球光、窓の自然光、LED光などさまざまな光が入り混ざっており、それらの塩梅を見ながらホワイトバランスを取らないとダメなので、実はオートではきれいに撮れないのだ。プロが採用する作戦の一つに「ストロボもろ焚き」がある。室内よりずっと明るいストロボ光を発光させれば室内光の影響は無視できて、ホワイトバランスもストロボ光だけに合わせれば良いことになる。ここでホワイトバランスをストロボマークにするだけで良いと思った人は失格、多くのプロはストロボ光を作った後に手動でホワイトバランスを取る。

◇筆者の流儀だが必ず反射率が18%のグレーの板を撮影してホワイトバランスを手動で合わせる。面倒でも30秒くらいで済む作業で、一度合わせるとグレーの板はグレーに写り、人肌は正確に表現できる。これがオートで撮ってしまうと、会社に戻ってからバラバラの色の画像をフォトショップで合わせる必要があるので、何十枚も出稿する場合は余計に1時間ほどかかる場合もある。よくカメラ業界では「レンズ前」と言われる言葉だが、撮る段階で納品できるデータを作ることが大切だ。

◇ストロボ光は大別すると3種類あり、ストロボから直に光を当てる「直接光」、壁や天井、反射傘に反射させる「反射光」、トレーシングペーパーなどを通す「ディフューズ光」があり、光の柔らかさが変わるのはもちろん、色温度が異なる。例えば反射光は直接光と比べると200K(ケルビン)ほど色温度が低いので、ストロボマークにセットすると黄色い写真になる。波長により黄色が反射しやすいのが原因であるが、プロでも光の波長すら分からない人は、「壁や天井が黄色いからだ」と大きな勘違いしている場合がある。詳しい理由は割愛するが、夕焼けが黄色いのと同じ理由だ。

◇会議室のような空間では最近LED光が多くなった。LEDの場合は感度を上げてストロボ無しで撮る方がきれいなバランスで撮れる。ISO3200位に上げれば、125分の1秒、F5.6くらいで切れる場合が多いので、なるべくストロボは使わない。それでも顔が少し暗くなる場合は、可能ならばレフ板を使うこともある。昔だったらストロボのもろ焚きで背景を暗くして人物だけを明るく撮る場合もあったが、今は部屋全体の雰囲気を残すのが主流だ。瞳にキャッチライトを入れると目力が増すので、色に影響の無い程度に少しだけストロボ光を入れる場合もある。

◇RAWモードで撮影し、後からホワイトバランスを取ればOKと思っている方も注意。後から色温度を調整すると確かに色かぶりが取れるが、暗部から明部まで綺麗にかぶりが取れるとは限らない。正確に合わせるためにはRAWモードであっても、18%グレー板を現場で撮影し、それを基準に合わせる必要がある。結果的に現場で手動でホワイトバランスを合わせた方が仕事が早いと言うことになる。

◇今回は難しい話になったが、物理や機材の特性などを理解しないと、一線は越えられないということが言いたい。一部の写真家には「とにかく撮ってみよう」みたいなことを言う人もいるが、簡単に撮れる写真は誰もが撮れる写真で、その中で楽しむという選択もあるが、一歩抜きん出たい人はしっかり勉強することを勧める。

#今日、ケーキ製作の撮影をした。先生によると原料を調合したり、ある温度で焼いたり、結局は化学反応を伴う実験みたいな感覚だという。ケーキが好きだけではダメで、理屈を理解しながら作らないと一線は越えられないらしい。写真と全く同じだ。


あべのハルカスへ行ったら、ハトの衝突痕を見つけた。