コラム

見出し 光を操る
更新時間 2017/10/08 名前 よねやん
本文 ◇アマチュアの写真愛好家で光をうまく操れる人はどれくらいいるだろうか?おそらく99%の人は「光の良い時」に写真を撮っているだけで、自分でコントロールできる人は皆無だと思う。できる人がいるとすれば、その人はプロのレベルに達していると言って良い。よく風景写真の世界では「何月何日の何時頃、どこどこの場所から何ミリで撮れば良い」のようなレシピに溢れているが、それは自分で光を操っているわけではない。

◇光というと身近なのがクリップオンストロボだが、天井バウンスして撮れるくらいは、自分で光を操っているとは言えず、多灯ライティングができないとダメだ。またレフ板を使ってモデル撮影の経験がある人も多いと思うが、実はレフ板一つでも奥が深く、ただレフ板で顔を明るくするだけでは分かっているとは言えない。

◇プロでも例えば、風景写真家は、ある光を撮るだけなので、光を読めても操ることは苦手だ。報道カメラマンは被写体が分かるように光を作り出せば問題ないので、細かい所まで光がコントロールできているわけではない。よく光を操れない写真家が、「写真はあるがままに撮ってこそ写真」なんて格好つけるが、光を操らない写真は単価が安く、巧みに光を操るコマーシャル写真などはいまだに単価が高いのが現実だ。

◇先日、有名なコマーシャルの写真家(Aさん)と話す機会があり、いろいろなことを教えてもらった。今の時代、デジカメが扱えるのはあたりまえで、ちょっと写真が撮れるくらいで、有名写真家のアシ(アシスタント)になろうとしても採用されないという。「スタジオ経験があること(光が操れる人)」が採用の条件になるらしい。よく30歳くらいで会社がつまらなくなり、「写真家になろう」と一念発起する人がいるが、かなり出遅れていると言える。ロードマップを考えると、20代前半でスタジオ勤務を経験し、20代後半で写真家に師事し、30代前半で独立というのが王道と思われる。その下積みがいやで、いきなり写真家を名乗り、写真展や写真集でアピールする人がいるが、写真家は名乗れても、カメラマンにはなれないだろう。

◇カメラマンはお医者さんのように資格が必要なわけではなく、カメラマンと自称した日からプロのようなところがあり、一人で暮らすくらいはいくらでも仕事がある。いくらAIが発達しても我々が生きているうちは仕事に困らないと思われる。例えばブライダルやお店の写真などなら沢山求人があるが、日当が2万円前後で、しかも交通費、機材費は自分持ちが多い。また毎日仕事があるわけではないので月に20日働くとしても、売り上げが40万円にしかならない。これで家族を養うのは難しい。

◇Aさんいわく、「日当2万円の写真を撮って意外と満足している若手のカメラマンが多く、なぜもっと上を目指さないのか不思議?」ということだった。上に行くには「光を操れないと撮れない写真の世界で勝負する」ことがポイントだそうだ。主にコマーシャルの写真になるが、光を操ることは一般の人にはまねできないので、一握りのプロのみの領域で単価が10倍、100倍と跳ね上がるそうだ。

◇アマチュアでもプロなみに撮れるようになった風景写真などは、デジカメ時代になって惨憺たるもので、例えば旅行雑誌の表紙の写真であれば30年前なら30万円くらいで売れていたものが、今はせいぜい3万円だそうだ。依頼されて撮る風景写真家もいるが「好きな風景写真を撮ってお金までもらえる」という域からは出るのが難しい。カメラマンのギャラに価格破壊が起きたのはデジカメになってからだそうだ。要するにデジカメになり、簡単な写真はクライアントの社員で撮ってしまうので、特殊技術料だった日当が、汗をかいて撮影する手間賃に化けてしまったそうだ。そこで最後の砦が「光を操る」ということなのだ。スタジオで複雑なライティングを必要とする写真はたとえクライアントが見ても、「次はマネして自分でやろう」とはならないのだ。また何千万円もかけて制作する広告を日当2万円のカメラマンに任せることは無い。やはりバランスがあり、広告制作費にも100万円単位で費やされるので、立派なスタジオで光が操れるカメラマンということになる。


複雑なライティング、これをマネしようとは思わない


伊丹空港でD850のテストを行った
300キロ近くで飛んでくるので撮るのは難しいが、
光を操らないので筆者的にはそんなに難しくない



プロペラ機は絵になる


変わり行く渋谷の街を撮影した


青山墓地で600ミリで撮影、
ニコンD850ならピントのつかみも良く簡単に撮れる