コラム

見出し 三脚はなぜ使う?
更新時間 2018/11/20 名前 よねやん
本文 ◇報道現場では三脚を使うことが少ない。ただし筆者に限って言えば、料理などのブツ撮り、スポーツや舞台などには三脚を持ち込むことが多い。よくアマチュアの撮影会などに行くと、重いのに三脚を持参している人を見かけが、はっきり言って不要で疲れるだけだ。今回は三脚を使う理由について考えてみたい。

<ブレ防止>
◇ブレ防止のためにいつでも三脚を使うというのは、大昔の大判カメラ時代の考えだ。今でも三脚信者の写真家は年配に多い。例えば大判の8×10インチのフィルム時代は150mmF8などのレンズが普通だったので、F16、IS100、4秒などという露出になり三脚が必須だった。今はデジタルでISO感度も高く、またブレ防止機構がついて手持ちでぶれることは少ない。筆者でいうと星の光跡や花火を撮る以外にブレ防止で三脚を使うことは無い。それより三脚無しで機動的に動き回る方が良い写真が撮れる。

<疲れない>
◇手持ちで構えると疲れるので、カメラ置き場として使う場合がある。相撲や野球でずっと300mmや400mmを手持ちで構えるとさすがに疲れる。撮らない時は直ぐに雲台のレバーを締めて固定し、腕を休めたり、パソコンの作業をしたりする。撮っている時は、雲台を緩めるのでブレ防止には関係が無い。ただし、ジャニーズの舞台のように会場を縦横無尽に人物が動き回る場合は、三脚だと稼働域が狭く、瞬時に手持ち撮影にも切り替えられる一脚を選択する場合もある。

<再現性>
◇例えば料理の写真を撮るとする。すると料理が運ばれる前に、カメラ、ストロボ、ダミーの食器を置いて緻密な場所決め、光決めを行う。試しに撮影してみて、微妙な角度や位置をミリ単位で決めてゆく。また瞬時に撮影データをタブレットに映し出し関係者同士で改良点を言い合い微調整する。ようやく料理が出てきて、数枚「カシャ」とシャッターを切ってあっけなく終わりとなるのだ。ここでカメラを三脚に固定しないとどうなるか?ミリ単位で位置決めしても、手持ちでは数センチ単位で撮影位置が異なり、出来上がりにバラつきが生ずるのだ。撮る度に結果の異なる写真はプロの仕事とは言えない。筆者が三脚を使う最大の理由はこの「再現性」にある。  ちなみに周りで、料理に三脚を使うカメラマンは筆者だけだ。大げさだとバカにされるが、しっかり撮り紙面で結果を出した後にその現場を訪れると、料理の先生が全幅の信頼を置いてくれる場合が多い。どの仕事も同じだと思うが、信頼関係の構築とはそのようなものだ。

<ハッタリ>
◇フリーのカメラマンは仕事で大きなカメラ、三脚を使うことが多い。理由は機材の物量を見せて「これじゃ自分では撮れない」とクライアントに思わせるためもあるという。実は小さな高級コンパクトカメラ位でも十分撮れる場合があるが、それでは「簡単だな」と思われ、次の仕事が来ないのだ。報道カメラマンにはクライアントがいないので、見せ掛けの機材を考える必要はない。ただし、大物の取材などは、大量のストロボや機材を持ち込み「大切な取材なのですよ」という雰囲気を醸し出すこともある。  例えば、年末にかけて「来年の展望」で各界の社長にインタビューすることが増えるが、いつも通り大量の機材を携え現場に行くと、ペン記者が「今日は社長のために、一番腕の良いカメラマンを連れてきました」と紹介されることがある。茶番劇のようだが、ホームパーティに、ホテルのシェフを呼んできて料理を作らせるような感覚だ。別に料理の腕は問題では無く「わざわざ呼んできた」という事実が大切なのだ。

◇話が少し脱線したが結局、アマチュアにとって三脚は殆ど必要の無いものに思える。必要なのは長時間露光の撮影くらいで、他はほぼ手持ちで十分だろう。あと鉄道、風景、野鳥などを撮るアマチュアを見ると場所取りで三脚を使うことが多いが、三脚自体を盗まれてしまうことがあるので、報道は数千円で買える脚立を使うことが多い。もし、場所取りをするならば、ジッツオの10万円もするような三脚はNG。特に暗くて人通りの多い花火などは、格好の餌食になる。そういう高級三脚は仕事でクライアントに「高そう」と思わせるためにある。盗難を考えるなら、無骨な安くて重い三脚をお勧めする。ちなみに報道の現場ではSLIKのマスターシリーズが定番だ。アルミ製の安いタイプだと25000円くらいで買える。少々重いが堅牢で、レバーひとつで上下左右に動くフリーターン雲台がスポーツに便利で、これ以外に選択肢はないという感じだ。大先輩の時代からずっとこの三脚なので、多分発売の1955年頃から同じものを使い続けているのだと思う。


三脚置き場、ほとんどがSLIKのボロい三脚


SLIKのマスター、雲台のレバーが1本というのが特徴


<番外編>某メーカー会長の張り込みで雨に打たれ、
カメラを乾燥させているところ
ちなみに雨で壊れたという話は聞いたことが無い
水没はしょっちゅうあるが