コラム

見出し 紡ぐプロジェクト
更新時間 2021/02/21 名前 よねやん
本文 ◇「紡ぐプロジェクト」という日本の美を未来へ伝え、世界に発信するという企画の担当になり、工芸品、仏像、建築物、能楽など主に江戸時代より古いものをひたすら撮っている。ほとんどが教科書に出てくるような国宝級のものばかりで、非常に神経をつかう。

◇葛飾北斎の版木(はんぎ・作品の元となる木版、いわゆるハンコの部分)を撮影した時は、古物商の事務所だったが、周りに高価な掛け軸がかけてあり、神経をすり減らした。破損などの事故があれば試合終了。何事もなく撮れて当たり前みたいな仕事なので本当に割に合わない。

◇美術品ならゆがみなく撮らなければならないので、特殊な技量を必要とする。例えば、四角い碁盤を真上から真四角に撮ってみて欲しい。ゆがんでしまったり、レンズの特性で樽型に四辺が丸まってしまったり、すごく難しいはずだ。また美術品は機材の落下の可能性がある上からは撮れない。斜めから台形に撮影し画像処理で正方形に戻したりする。

◇風景写真や、ネイチャー写真、人物写真などは、傾いてもゆがんでも、それが作風だが、美術品は淡々と一つの正解に向かって撮る感じ。そういう撮影の難しさがあるので、どうしても担当者を決める必要があり、お鉢が回ってきたわけだ。その分、AKBやら若手女優などを撮る機会がめっきり減ってしまって寂しいあまりだ。

◇美術品の図録などを制作する場合、専門カメラマンがいて、結構ギャラが高いそうだが、それでも頼むのは分かるような気がした。例えば、そこそこ撮れる副業カメラマンに頼んだ場合、安全が担保できていないし、もし何かあれば大きな責任問題になってしまう。それよりは実績があり、変なことしないカメラマンを高くても連れてきた方が絶対に良い。

◇例えば、1日頼んで10万円だけで済む副業カメラマンと、実績ある50万円のカメラマンだと、絶対に後者を私だって選ぶ。「えっ、5倍も違うのに!」と思うかも知れないが、少し美術界に首を突っ込んで分かったが、カメラマンの10万円と50万円の差なんて、誤差どころか公差の範囲内だ。美術品の輸送やメンテナンス、警備など2桁も3桁も違う。撮影で学ぶ点が多かったが、それ以上に美術界の流れが少しだけ垣間見られて勉強になった。

◇本日「日本のたてもの」(上野・東京国立博物館)が、大盛況のうちに閉幕した。その図録に掲載した建物写真の撮影で苦労したが、うれしいことに初版は完売、重版出来となった。コロナ禍の割にはお客さんの入りもよく、最終日にかけてはチケットの完売が続き本当に良かった。

◇「日本のたてもの」が終わったと思ったら、来月は皇居・二重橋で行われる能舞台を撮ったり、世界らん展を撮ったり、AKBの撮影とは程遠い仕事が続く。


展示会場で撮った写真、被写界深度の設定がキモ


日本家屋は外からの光で美しさを増す


展示会場は照明に凝っており、普通に撮るだけでカッコよい